アドラー心理学とは?“生きにくさ”を抱えるあなたに贈る【勇気の心理学】
アドラー心理学は、今、“生きにくさ”を感じている人たちから注目されている分野です。人生を自らの力で切り開くカギになるともいわれています。そこで今回は、アドラー心理学の特徴やおさえるべきポイントから、日常生活での取り入れ方まで解説します。ぜひ、幸せに生きるためのヒントにしてくださいね。
目次
- そもそも、アドラー心理学って?
- アドラー心理学の特徴
- アドラー心理学でおさえるべき4つのポイント
- 【シーン別】アドラー心理学活用法
- アドラー心理学が学べる本
- アドラー心理学を上手に取り入れて「生きやすい環境」を整えよう
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そもそも、アドラー心理学って?
アドラー心理学は、「自己啓発の父」として知られるオーストリアの心理学者、アルフレッド・アドラーによって提唱された心理学です。「幸福とはなにか」「いかに生きるか」という誰もが抱く問いに、明確な思想を示しています。
アドラー心理学が注目されるわけ
アドラー心理学が日本で広まるきっかけとなったのは、『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀 史健著)のヒットです。
この本が多くの人に受け入れられた背景には、インターネットやSNSの発達が関係しているとされています。多様な生き方・考え方を知る機会が増したことで、他者と自分を比較したり、「自分らしさとは?」と悩んだりする人も増えたのです。
アドラー心理学は、「情報社会に生きる現代人の救いの一手」として話題性を高めていきました。
フロイト・ユングとアドラーの違い
アドラーは、フロイト、ユングとともに「心理学の三大巨頭」と称されています。同時代に活躍した三人ですが、学術的な考え方やアプローチは三者三様です。
フロイトとの違い
フロイトは、「現在の行動・人格を形成するのは、過去の経験だ」という「原因論」を提唱した人物です。特定の原因(過去)が今の生き方を決定づけている、と主張しました。
対称的に、アドラーは「人は、目的を達成するために生きている」という「目的論」を展開しています。こうなりたい!という未来の姿(目的)から逆算した結果が今の行動だ、とする考え方です。
ユングとの違い
ユングは、「人の性格や人格は2つの態度と4つの機能、合計8タイプに分類できる」という「タイプ論」を提唱した人物です。「分析心理学の創始者」とも呼ばれており、分析によって人間の心理を解き明かすことに重きをおく点で、個人の創造力や自分らしくあることを尊重するアドラーのアプローチとは異なります。
アドラー心理学の特徴
アドラーは、「意識も無意識も対立することはない」としたうえで、背景となる哲学を大きく5つの理論に絞りました。それぞれくわしく確認していきましょう。
アドラー心理学の5つの理論
アドラー心理学の基本となるのは、「対人関係論」「全体論」「主体論」「認知論」「目的論」の5つの理論です。
対人関係論|すべての行動には「相手」がいる
どんな悩みにも、必ず“誰か”の影が存在するという考え方です。アドラー心理学では、「悩みのすべては対人関係のなかにある」とされています。
多くの人が経験する「劣等感」も、“誰か”と自分を比較することから生まれます。理想とする自分を描いているからこそ、それを実現している“誰か”より劣っていると落ち込むのです。
裏を返せば、「劣等感を利用すれば理想の自分に近づける」ということ。「人間のあらゆる行動には相手役が存在する」ことを認識できれば、現在のアクションを未来へつながるものへと変えられます。
全体論|人間はなにからも分けることができない存在
人間は、「精神」「意識・無意識」「肉体」すべてにおいて分割できない存在である、という考え方です。
「わかっているけどやめられない」といった経験はありませんか?意識と身体はつながっているとするアドラー心理学では、「やめられない」のではなく「やめたくない」、「できない」のではなく「しない」だけだと捉えます。
反対に、「しよう」と思えば「できる」わけで、人は変わろうと思えばいくらでも変われるということです。
主体論|人生は自分で決められる
人間は、自分のすべての行動を自分で決められる、とする考え方です。
誰もが「自身の人生の主役」で、「環境や過去できごとの犠牲者」ではありません。置かれた環境をどう捉え、どのように行動するかを決めるのは自分自身だ、と認識することで、主体的に生きられるようになります。
認知論|誰もが自分だけのメガネで世界をみる
人間は、自分の主観を通してみた現実を体験している、という考え方です。事実そのものを体験しているのではなく、自分なりの解釈を体験しているにすぎません。
コップに水が「半分も入っている」のか、「半分しか入っていない」のか。同じコップ(現実)をみているにもかかわらず、人によって解釈が変わります。
つまり、「解釈次第で人生(現実)は変えられる」ということです。
目的論|「なりたい自分」に向かっていける
人間は、目的を果たすために行動をしている、とする考え方です。アドラー心理学では、「過去のできごとが現在をつくる」のではなく、「自分の目的を達成するために自らが選択した方法=現在の行動」であるとされます。
「なぜミスをしたのか」ではなく、「今後ミスをしないためにはどうすればよいのか」を考える、といったように、過去の原因にとらわれず、未来の目的に目を向けられると、現在の行動が変わります。
アドラー心理学でおさえるべき4つのポイント
5つの理論に加え、ここでご紹介する4つのポイントをおさえておくと、アドラー心理学をより深く理解できます。
共同体感覚
「共同体感覚」とは、自分は共同体の一部だと主体的に感じながら他者と関わり合える感覚のことです。
家族、学校、職場・・・・・・人は、どのライフステージをとっても、必ずなにかのコミュニティに属して生きています。アドラー心理学では、人は「自分の居場所はここにある」と感じられたときに幸せを感じ、他者への貢献を意識しはじめると説いています。
ヨコの関係
アドラー心理学では、対人関係は上から下への支配である「タテの関係」ではなく、能力や立場の違いはあっても、人としては上下の差がない「ヨコの関係」を大切にします。
親子であっても、上司と部下であっても、人と人とはあくまでも対等です。
課題の分離
アドラー心理学独自の思想のひとつに、「課題の分離」があります。自分と他者の課題は「べつもの」として分けて考えるのです。
相手のミスを指摘するとき、「こんなことを言うと傷つけてしまうかな・・・・・・」と悩むこともあるでしょう。しかし、指摘を「どのように捉えるか」は相手の課題で、こちらがコントロールできるものではありません。
相手の課題か?自分の課題か?と切り離して考えると、悩みが減って生きやすくなります。
勇気づけ
勇気づけとは、自身、あるいは他者に「課題に立ち向かうエネルギー」を与えるテクニックです。アドラー心理学は、この勇気づけをもっとも重視することから、別名「勇気の心理学」とも呼ばれます。
勇気がない人は、前進することをおそれて変化・成長を止めてしまいます。勇気づけをおこなうことで、新しい自分を構築しはじめるのです。
【シーン別】アドラー心理学活用法
アドラー心理学は、人間関係をスムーズにする心理学です。人と人とが関わり合う全場面で活用できます。
ビジネスシーン
部下とどのように関わればよいのかと悩む人も多いかもしれません。職場コミュニケーションで取り入れたいのは、「ヨコの関係」と「勇気づけ」、「共同体感覚」です。
上司と部下とでは、役割が異なるだけ。人としては対等です。ほめたり叱ったりする必要はありません。
大切なのは、「感情」を伝えること。成果や成績をほめるのではなく、仕事の過程に対して感謝を述べましょう。
具体的には、「ありがとう」「助かった」と伝えるだけで十分です。これが勇気づけとなり、部下は「まだ満足に仕事ができなくても、自分はここにいていいんだ」とチームに存在価値を見いだせます。
子育て
子育てで大事なのは、「課題の分離」と「勇気づけ」です。
もっとも重要なテーマは、「子どもの課題に親が介入しない」こと。親が心配のあまり、先回りの指示や手助けをしてしまうケースは少なくありませんが、アドラー心理学では、こうした行動は「他者の課題に土足で踏み込む行為」とされます。
親が子どもの課題まで抱え込んでしまうばかりか、子ども本人の自立の芽も摘んでしまいかねません。
いわれなくても、子どもは「やるべきことはやらねばならない」ことはわかっています。やるかやらないかは、本人の意思。親は、「頼ってきたときにはサポートしよう」と見守る姿勢が大切です。
そして、子どもが課題を達成したときには、「すごいね」とほめるのではなく、「がんばったことがうれしい」と伝えましょう。それが子どもの自信となり、次も!とやる気を出します。
恋愛
恋愛でもっとも重視したいのは、「課題の分離」です。
好きな人ができたら、誰もが相手から「愛される」ことを願うもの。しかし、愛されることを目的にすると、相手の思いが前提になったり、相手が自分の期待する行動をしてくれなかったりする場面も出てきます。
相手があなたを愛するかどうかは、「相手の課題」。相手の気持ちは、あなたがコントロールできるものではないのです。
「人を愛する」こと自体が自らの課題だとわかると、そこにギブ&テイクを求めません。課題の分離を意識することで、「自分が人を愛せる」ことが幸せだと気づけます。
アドラー心理学が学べる本
アドラー心理学に関する書籍でもっとも有名なのは、冒頭でも紹介した『嫌われる勇気』です。
嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え [ 岸見一郎 ]
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登場人物たちの対話形で解説されているため、読みやすくてわかりやすい内容になっています。
実は、アドラー心理学に関する書籍は、『嫌われる勇気』以外にも数多く出版されています。
学術的な内容が苦手な人におすすめなのは、名言集です。
見開きで名言とその解説が掲載されており、自分に必要な箇所から親しめます。
文章を読むのが苦手なら、コミックはいかかでしょうか?
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読書も心理学も初心者という人でも、楽しみながら学べます。
読みやすいものから選んでみてくださいね。
アドラー心理学を上手に取り入れて「生きやすい環境」を整えよう
別名「勇気の心理学」とも呼ばれるアドラー心理学は、自分の生き方や考え方を見直すきっかけを与えてくれるものです。ストレスの多い現代社会において、非常に役立つ実践的な教えではないでしょうか?
「心理学」と聞くとなんだか身構えてしまいがちですが、実は日常に取り入れやすいのもアドラー心理学の魅力。上手に活用して、生きやすい環境を整えてくださいね。